【劇場留学】『モモ』と音楽の旅の記録 その7 稽古5

更新日:2026.3/19(木)

小田原三の丸ホールが、市民とプロのアーティストと一緒に劇場作品をつくる【劇場留学】シリーズ第三弾!
2025年3月に上演した「劇場留学〜『モモ』と時間の旅〜」の上演から、大胆なリクリエイションで再びミヒャエル・エンデの『モモ』に挑戦します。

"旅の記録"その7では、4回目の週末の稽古模様をお届けします。
劇場留学ではお馴染みとなった[楽屋ばなし]も必見!

留学日 2026年2月21日(土)
2026年2月22日(日)
2026年2月23日(月祝)
レポート 小林臣人(小田原三の丸ホール)

2月21日(土)

作品の世界を彩る大切な要素である「歌」に焦点を当てた、歌唱指導の西野誠さんによる歌稽古を1日行いました。
子どもたち数人で丁寧な音取りからスタート。子どもの透き通った歌声が静かな稽古場に響き渡り、一気に物語の世界観が描き出され、出演者たちは試行錯誤しながらも、楽しそうに声を合わせていました。
午後は全員揃って、皆で歌う曲の調整へと移ります。各曲をブラッシュアップしていく熱い時間が流れます。全員が自分の役割に集中する密度の高い時間となりました。


休憩を挟んで後半は、さらに各シーンの歌唱表現を深めていきました。シーンによって歌唱をしない人は、振付助手の林田海里さんによるダンスの練習を行いました。
コミカルな表現の楽曲から、しっとりと力強く歌い上げるブルースなど、それぞれ曲の個性が際立った楽曲に挑戦して、充実した内容で一日の行程を終えました。
一人ひとりが歌唱指導の西野誠さんに直接見ていただく中で、声の出し方や音の捉え方など、個々の課題も明確に見えてきました。音を大切に積み重ねていく作業は、この作品に命を吹き込む大切な過程だと思います。
『モモ』の世界がより鮮明に、より豊かになっていくのを感じる一日となりました。

2月22日(日)

この日の稽古は、小田原三の丸ホールからスタートしました。
午前中に取り組んだのは、二人一組で行う「ブラインドウォーク」です。 
一人が目隠しをし、もう一人のガイドにより三の丸ホール周辺を歩きます。
普段、健常者の多くの人が情報の90%を頼っているという「視覚」をあえて遮断することで、周囲の音、足裏に伝わる地面の感触、風の匂いなど、聴覚・触覚・嗅覚を機能させる感覚を養います。お芝居をするときに、とても大切な感覚です。
参加者たちはハラハラドキドキしながらも、感覚を研ぎ澄ましました。
きっとこの日の午後の稽古は、いつもと違ったのではないでしょうか。
演出の川口智子さんからもブラインドウォークの感想共有があり、「目を瞑ることで鍛えられる、周囲への繊細な感覚」の大切さを全員で実感しました。


そして午後は、第10章の稽古に突入しました。
まだセリフが完璧に入っていない部分もあり、川口さんから「稽古ができない!」と注意を受ける場面もあり、一人ひとりがセリフを覚えることの大切さを自覚しました。 
本番まで残り約一ヶ月。感覚を研ぎ澄ませ、より深い表現へと歩みを進めています。

2月23日(月祝)

この日の稽古は、自分たちが劇場で演劇作品を創り、上演することの意味を深く考える時間から始まりました。
国連UNHCRが制作した、誌の朗読フィルム『彼らがてにしていたもの(原題:What They Took With Them:a List)』(YouTube公開)を全員で視聴しました。
住んでいるところから、ある日突然避難しなくてはいけなくなっている人々が、何を持って逃げたのかを語っている作品です。

どう受け止めたかは、それぞれです。ただ、いまも世界のどこかで起きていることです。
川口さんからは、「この作品を劇場でつくることが、社会にとってどのような価値を持つのかを想像してほしい」とお話がありました。
原作者ミヒャエル・エンデが物語に込めた想い、そして一人ひとりが何を伝えるべきかを改めて見つめ直し、劇場に足を運んでくれるお客さんから「時間」をいただくことの責任を胸に刻みます。

続いて、グループに分かれて第3部のシーンの作り込みを行いました。
「台本のト書きをしっかりと読み込み、自分たちでどう表現するかを考える」という稽古に対し、出演者同士で熱心に意見を出し合いながら演じていきました。
そしていよいよ3部の通し稽古です。
各シーンの抜き稽古ではスムーズに進んでいた箇所でも、いざ通し稽古となるとセリフが飛んでしまったり、劇中の歌の歌い出しのタイミングがずれたりと、通しならではの課題も浮き彫りになりました。
 
さいごには、フィッティング(衣装合わせ)も実施しました。
本番で使用する衣装を実際に身にまとい、大人は程よい緊張感に包まれ、子供たちは弾けるような笑顔を見せていたのが印象的でした。
 
一つひとつのシーンを丁寧に積み上げ、観てくださる皆さんに楽しんでいただけるよう、一歩ずつ完成度を高めて本番に備えていきます。

楽屋ばなし

楽屋ばなし

井上瑞基さん

――3年目の「劇場留学」はどうですか?
楽しいです。

――瑞基にとって、いままでの劇場留学との違いってあるの?
舞台の形が全然変わっているし、台本も違うし、去年とは違うことやっている感じが楽しい。

――今回、劇場留学初参加のときは、5年生のときを思い出すとどうですか?
変わらない(笑) でも色んな人とコミュニケーションとって、ここはこうしたいとか言えるようになったかな。

――そうだよねぇ。3年も参加するからには、面白いっていうのがるの?
うん。舞台の両サイドにお客さんがいる形や、出演者も舞台上にずっと出てて、裏(楽屋)にはけたりしないのがやっぱり面白い。

――今年は何を頑張りたいですか?
今年は、歌とか踊りが多いから、両方とも同時にできるように頑張りたいです。

――最後にお客さんに見てほしいこと、「モモ」の好きなところとか、意気込みをお願いします。
(3分くらい考えて)去年観にきた人も、また観にきてほしいです。

井上瑞基(いのうえ・みずき)

こんにちは。中学1年生の井上瑞基です。
僕は普段、シール探しや合気道をしています。
そして今回劇場留学に応募した理由は、第一弾・第二弾に出演して、いろんな人と1つのものを作るのが楽しいと思ったからです。
僕は今、本番に向けて「楽しく・安全に・真剣に」みんなで一緒に頑張っています。もしよかったら見に来てくださーい。
 
撮影:竹田浩幸

楽屋ばなし

高井なな美さん

――お稽古どうですか?
楽しい! 台詞をしゃべるのが楽しい。

――踊りはどうですか?
踊りは、間違えちゃうけど、次こうしたらいいんだって思いながらやってる。

――歌はお家でも練習するの?
うん。

――ハープも練習してる? なんでハープ始めたの?
うん。幼稚園の頃にプロの人が来てくれる音楽会があって、一番最初がハープで楽しそうだったから始めた。


――今回、舞台でハープを弾き、歌い、踊り、台詞も言うけど、どうですか?
ハープの発表会は弾くだけで、歌ったり踊ったりはしなかったから、今回は歌や踊りもあって、やってみたら楽しい。
最初の頃は、恥ずかしいかもって心配で、今もちょっと恥ずかしいときはあるけど、最初よりは思わなくなった。

 

――この間、(栗原)沙也加さんと2人で踊ってみてどうでした?
すごい緊張した。

 

――そうだよね(笑)
最後に、来てくれるお客さんにメッセージをお願いします。

ダンスも歌もあまり上手ではないし、下手くそだけど、頑張るから見て欲しい!

高井なな美(たかい・ななみ)

わたしは、ふじさわにすんでいる2年生です。
3さいのときから、ふじさわ子どもげきじょうで、げきや人形げきをたくさん見てきて、おしばいが大すきです。
かぞえてみたら50回くらい見ていました。
本もすきで、2年生になった春から『モモ』をよみはじめて、そのとちゅうで、げきじょうりゅう学のオーディションを見つけておうぼしました。
 
撮影:竹田浩幸

楽屋ばなし

小笠原美香さん

――どうして劇場留学に参加しようと思ったんですか?
去年の『モモ』と時間の旅」に出演していた李そじんさんのSNS投稿を見ていました。本当は公演を観たかったし、参加もしたかったけど、その時はもう手遅れだったんです。

 

――そじんは友だち?
NODA・MAPにそじんさんが出演されていて、声が素敵だなと思って、SNSをフォローし始めました。そこから、そじんさんが出ている他の作品も観に行ったりするようになって、今回はありがたいことにご縁があり、劇場留学に参加させてもらってます。

――なるほど! それはすごいね。じゃあもともと演劇が大好き? やっていたの?
やってはいないけど、今すごい見あさっています。
一番のきっかけが、阿佐ヶ谷スパイダーズ(以下、阿佐スパ)の劇団員募集に応募したことです。阿佐スパのお芝居は観たことなかったんですけど(笑)、劇団員の人たちのメッセージがすごく心に響いて、この方達たちとなら、ちょっと恥ずかしくても受けてみようって応募して、最終選考までは残ったんです。
それがきっかけで、阿佐スパの人たちが出演している舞台を観に行ったり、『さらば黄昏』の松本公演限定の出演者募集に応募して出演しました。
だから、動き始めたら色々できた! 今回もわからないけど、できる気がする! と思ってオーディションで"蝉爆弾"とかやってよかった。


――すごーい!  "蝉爆弾"すごい印象に残っているよ。もともとお芝居をやりたいと思っていたの?
お芝居をやりたい気持ちは、たぶん根底にはあると思います。今思えば、家族も「こんなことがあった」っていう説明を、回想シーンみたいな感じでやり合ってたんです。
NODA・MAPの公演がWOWOWで放送されてたのを観たのが一番最初の衝撃です。内容はよく分からないけど、なんて不思議な世界なんだろうと。そしてコロナ禍が開けて、たまたま当日券があるというのを目にして観に行って、すごく高揚して、あの台詞言ってみたいなぁって思いました。


――そうなんだ。じゃあ、もっとできるじゃん(笑) やっぱいいいものを観ていないとイメージがないから。
  実際にやってみてどう?

単純に楽しいということと、演じるってなんだ? でも演じたくて参加したよなって思い出しながら稽古しています。
智ちゃんに言われることも、言われるの分かってたじゃん。って思うときもあるけど、それを具現化して言ってくれる人がいるのはありがたくて、「色々とやろうとしているのは分かるけど、まだ35%くらいだよ」って言われたときに、すごく腑に落ちたんです。家で一人で変なことをしてたのが、ここでできる、やらせてもらえるんだって。自分がお芝居観て面白くて、やってみたいと思ったから、もっとやらなきゃって思ってます。

 

――なるほど。面白いね。最後にお客さんにメッセージをお願いします。
自分と同じように、お芝居を観て、「それやってみたい」と思ってもらえたら最高です。

小笠原美香(おがさわら・みか)

会社員をしながらも演劇に携わることが出来ないか模索していた所、劇場留学に出会いました。
ご縁あり出演が決まり稽古が始まりましたが、初めての人と知り合え歌ったり踊ったり台詞を言う事も初めてで楽しい日々です。
本番どうなるのか楽しみです。



 
撮影:竹田浩幸

チケット好評発売中!


「劇場留学〜『モモ』と音楽の旅〜」
「モモ」
開催日時:2026年3月27日(金)19:00、28日(土)14:00/18:00、30日(日)14:00
会場:小田原三の丸ホール 小ホール
脚本・演出・美術:川口智子
振付:木原浩太
音楽:鈴木光介
出演:尾倉ケント、栗原沙也加、木原浩太、高橋牧、公募出演者 約22名

公演詳細ページ


✏︎ 2023年「劇場留学〜お芝居をつくる7日間〜」留学の記録はこちら! 
「劇場留学〜お芝居をつくる7日間〜」ガイド役の映画監督・北川未来さんによる映像と、演劇事業のサポートスタッフの経験もあり斎藤明仁さん(大学院生)によるテキストによる記録です!
【劇場留学】8月21日(月) 留学1日目の記録【劇場留学】8月22日(火) 留学2日目の記録【劇場留学】8月23日(水) 留学3日目の記録【劇場留学】8月24日(木) 留学4日目の記録【劇場留学】8月25日(金) 留学5日目の記録【劇場留学】8月26日(土)留学6日目の記録【劇場留学】8月27日(日)留学7日目の記録

✏︎2023年「劇場留学〜お芝居をつくる7日間〜」小田原でのしらべの記録 
<しらべの旅 1日目 日記 担当:川口智子さん>
【劇場留学】しらべの旅 1日目(1/3)【劇場留学】しらべの旅 1日目(2/3)【劇場留学】しらべの旅 1日目(3/3)
<しらべの旅 2日目 日記 担当:せせらぎさん>
【劇場留学】しらべの旅 2日目(1/2)【劇場留学】しらべの旅 2日目(2/2)
<しらべの旅 3日目 担当:川口智子さん>
【劇場留学】しらべの旅 3日目 (1/3)/【劇場留学】しらべの旅 3日目 (2/3) 【劇場留学】しらべの旅 3日目 (3/3)
<しらべの旅 4日目 担当:川口智子さん>
【劇場留学】しらべの旅 4日目 (1/2)【劇場留学】しらべの旅 4日目 (2/2)

 

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