【劇場留学】しらべの旅 2日目 ( 2/2 )

2023.7/27(木)

 2023年夏、劇場でしかできないスペシャルな体験を楽しんでもらおうと開催する「三の丸ホールの夏休み『劇場留学〜お芝居をつくる7日間〜』」。公演に先駆け、この4月から断続的に小田原に来てワクワクを探している(らしい?!)アーティストによる旅の記録。大道芸人・せせらぎさんによる「しらべの旅 2日目」は、 小田原漁港(早川漁港)→【劇場留学】しらべの旅 2日目(1/2) の後、少し遠出した2ヵ所でのリサーチの様子をお伝えします。

旅人 川口智子(演出家/「劇場留学」ガイド役)
せせらぎ(大道芸人/「劇場留学」ガイド役)
北川未来(映画監督/「劇場留学」ガイド役)
森田百合花(小田原三の丸ホール スタッフ)
旅した日 2023年5月22日(月)
行き先 小田原漁港(早川漁港)、諏訪の原公園、大雄山最乗寺

旅人・旅の日記:せせらぎ

大道芸人。劇団ドクトペッパズ主宰。パペットやオブジェクトを使った子ども向けの作品を創作、上演する。演劇と大道芸の二足の草鞋の活動を継続している。
[公式Twitter] せせらぎ 公式Twitter


 

諏訪の原公園

  お腹を満たした私達は諏訪の原公園に向かう。諏訪の原公園は長い滑り台が人気で、こちらもなかなか賑わっていた。遊具も凝っていて、風の音を集音する物が印象的であった。また、覗くとその中が万華鏡のように見える部屋があり、演出の川口さんがその部屋に入ると服がカラフルで面白く、「万華鏡に具合のいい服」なる概念があるのだと知る。リサーチがてら遊んでいると、ラジオ体操の放送が流れてきた。職員と思しき方が先んじて体操を始めると、周りの大人も子どもも体操を始める。「この波に乗れば今日一日健康でいられる!」と直感した私達も体操を始めた。ある種異様な光景でもあるが、街にこういう瞬間がもっとあっても良いのではとも感じられた。

諏訪の原公園に到着

風の音を集める遊具を聴く

ラジオ体操♪

大雄山最乗寺

 最後に訪れた最乗寺は天狗伝説の由来のあるお寺であった。なんでも最乗寺建立の際、天狗が神通力によって岩を削ったりと手伝い、そのままこのお寺の守り神となったそうだ。直径1mはありそうな杉の巨木と美しい苔に覆われたお寺で境内の池ではカエルが鳴いていた。近づくと一斉に黙る。「人感センサーカエル……ふふ」そんなことを森田さん(小田原三の丸ホール スタッフ)が言っていた。

 天狗の像や寄贈された巨大な下駄の数々を見物しつつ、私達はお寺の奥へと歩いた。最後に奥の院があった。全体に階段の多いお寺だが、いきなり天に届くかのような段数の階段が現れ私達は尻込みした。最後まで見るのか、引き返すか。「まあ、もう一度来ることもそうないだろうし」という演出家の言葉で、私達は登ることを心に決めた。長い階段を一歩一歩と汗をかきながら登っていき、ようやっと到着すると、御神仏は当日公開されておらず、お寺の所縁の水「金剛水発売中 200円」の看板があった。私達は、このタイミングこそもっとも水を売るのに適した時であるとその商魂にいたく感心し、オチもついたということでやれやれと山を降り、2日目のリサーチ終了となった。


  私の視点から観た小田原の2回目のリサーチは概ねこのようであった。私達は小田原の街を再現したいわけでも正確な歴史に基づいたパフォーマンスをつくりたいわけでもない。参加者一人ひとりの視線を通した街から、Idealな街(演出家の言葉を借りると)をまずは構想しようということだ。その点、市街の中心から離れた山と海。山は宗教的な場所でもあり、生活に困窮したものが逃げて住み着く場所でもあった。海は限界でもあり、全く別の文化と繋がる場所でもある。そういった周辺の存在と中心はやはり切り離せるものでないという実感を得たことは収穫であった。


三の丸ホールの夏休み「劇場留学〜お芝居をつくる7日間〜」
[開催日]2023年8月21日(月)〜 27日(日)
[会場]小ホール、スタジオ、小田原市観光交流センター、小田原のまち

「劇場留学」公演詳細ページ

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