【劇場留学】『モモ』と時間の旅の記録 その16 場当たり

更新日:2025.3/28(金)

 2025年3月末、ミヒャエル・エンデ「モモ」を公募出演者&プロの劇場スタッフと共に創作・上演する「劇場留学〜『モモ』と時間の旅〜」。<旅の記録>16回目は、いよいよスタートする舞台稽古の模様をお届け!

留学日 2025年3月22日(土)10:00〜18:00
参加者 ・<劇場留学生>公募出演者
・川口智子(演出家/「劇場留学〜『モモ』と時間の旅〜」脚本・演出・美術)
・木原浩太(振付家・ダンサー/「劇場留学〜『モモ』と時間の旅〜」振付・出演)
・李 そじん(俳優/「劇場留学〜『モモ』と時間の旅〜」出演)
・埜本幸良(俳優/「劇場留学〜『モモ』と時間の旅〜」出演)
・市民ホール事業係 スタッフ
レポート 3/22(土):森田百合花(市民ホール事業係)

3月22日(土)

 出演者の皆さんは今日から劇場入りです。初めて舞台美術を目の当たりにして、びっくりしている様子でした。
 これから一緒に舞台をつくる三の丸ホールの舞台スタッフの紹介を行い、舞台美術と、劇場で注意することなどお話がありました。

 これまでの稽古場とは環境が異なり、危ない場所もあります。ちょっとした不注意が事故のもとになるので、安全第一に行うために大切な確認です。
 場当たり*も、舞台の上に立つ感覚をつかみながら、一つひとつ、動きに問題はないか、危なくないか確認しながら行いました。

*場当たり=本番で使用する舞台で、立ち位置や舞台、音響、照明、道具類等を確認する稽古のこと。


楽屋ばなし 12

26名の公募出演者の自己紹介と共に、稽古の感想をお聞きした【楽屋ばなし】。ラスト3回はプロの演劇人たちのメッセージをご紹介!

楽屋ばなし<12回目>

李 そじんさん

 市民の方々とお芝居をつくるのは初めてで、翻弄されまくってます(笑)
 稽古の最初の頃、本読みした時に、皆さんとても素敵で。市民の方は、台詞をしゃべるときに、作為がないから、その分私の嘘がバレる、ヤバい! と感じて。演技することの、嘘とほんとうのバランスが試される感じがあるなと。市民とかプロとか年齢とか関係なく、演技って、本来誰でもできるものなんだよなってあらためて思わされました。
 
 稽古の中盤になると、皆に対して「ちゃんと台詞を覚えてきてくれ~!」「子どもたちもっとまじめにやってくれ~!」 という気持ちも正直ありました。皆も、最初はシンプルに演劇楽しい!みたいな雰囲気だったのが、だんだんそれぞれの壁にぶつかっているようにも見えて。でも、そうやってもがきながら稽古を重ねていく中で、どんどん芝居や稽古の取り組み方が変わっていって、その姿にすごく刺激をもらいました。
 

 プロと市民、と枠がわかれていて、自分はプロ枠として参加しているけど、自分の役割はなんなのかと考えると、自分自身に対しても不安やもやもやを感じることも多々あって。稽古場での居方もそうだし、芝居の中身自体もそうだし。今までにない孤独感を味わった気がしてます(笑)。
 
 そんな感じで両極端に気持ちが揺れながら稽古を重ねてきて、今、最終的に、皆を信じられる。皆とならがんばれる。っていう力をもらえていて、それはすごいことだし、ありがたいことだなと感じています。

 (川口)智子さんの演出を受けるのは3年ぶり。
 前回は、いい意味で俳優に任せてくれるという印象がありました。俳優が上演の時間を遊べる土台づくりは、どーんとこっち(演出)でやるから、あとは自由にやって!って放し飼いされるイメージ(笑)。決まっているきっかけやミザンス*は本当に必要最低限でほぼなくて。でも、土台への信頼があるから、怖くもあるけど瞬間瞬間を生きることに集中できて、楽しかったんですよね。

 *ミザンス=舞台上での人物やものの配置、動線、演出全般を指す言葉・語源はフランス語の「ミザンセーヌ(Mise-en-scène)」で、「舞台に置くこと」という意味
 
 だけど今回は、ミザンスやきっかけをものすごく細かく決めていっていて、智子さんってこんなに具体的に決めたりもするんだって驚きました!(笑)色んな演出のチャンネルを持っている方なんだなと。
 

 智子さんは演出家として演技に対する言葉をちゃんと持っている方でもあって、そこが私は好きなんですけど、時にすごく高度なことを言われてるなと感じることもあります。市民の方々に対してにも、智子さんは手加減せず言葉を渡していくから、皆大変じゃないかなと勝手に心配することもあります(笑)

 でも、手加減しないって、皆に期待してるってことでもあると思うから、いいことでもあるかなって。皆本当にハードだと思うけど(涙)

  自分への言葉ではないときでも、その言葉もらっとこ!って、 “智子語録”を聞き逃さないようにしてます。

 今日、劇場で場当たりをして、この座組で、この稽古回数でお芝居をつくるということに対して、智子さんがたくさんのことを計算されて進めてきてたんだなということが腹落ちして、自分の中でも気持ちがさらに整ってきました。

 『モモ』は子どもの頃から知っていたけど、この企画の話をいただいて、初めて読みました。読んだ印象は、ふぅーんみたいな(笑)
。自分がこの作品を演劇でやるとか、『モモ』ファンは世に多いとか、色んな先入観?前情報?ゆえに、妙に冷静に読んでしまった感がありました。その頃は、モモ役をやるとは思ってなかったので、灰色の男チームに入るのかなー? とかナレーション役みたいな感じで地の文を喋ることになるのかなー? とかそんな想像をしながら。
 
 だけど、いざモモ役としてこの劇をつくっていく中で、モモが話の中で過ごしている時間を体感してみると、人生のすべてが詰まっているマジカルなお話すぎる!! と思いました。

 今日の通し稽古の最後の場面の時なんて、私ってちゃんと人生を生きられてないなって懺悔したい気持ちになりました(笑)そのくらい広い視座にさせてくれるものがたくさん詰まっている、純度が高いお話なのかなと思います。
 

 舞台美術、超シンプルでかっこいいので、劇場に入った瞬間にハッとなると思います。照明もにぎやかで華やかで。
 
 そこからは、俳優たち皆の力で、目の前で何かが起こり続けるお芝居になってます。まっさらな気持ちで楽しんで、何かしら感じていただけたら嬉しいです。

李 そじん(俳優)

俳優。1990年生まれ、東京都出身。青年団・東京デスロックに所属。日本大学芸術学部演劇学科在学中より演劇活動をはじめ、藤田貴大、蓬莱竜太、根本宗子、山本卓卓、玉田真也、柴幸男、野田秀樹など、さまざまな演出家の作品に出演。 映画「夜明けの夫婦」(山内ケンジ監督)、「テン・ストーリーズ」(山西竜矢監督)に出演するなど、映像作品にも活躍の幅を広げている。 近年の出演作は、東京演劇道場「わが町」、KAAT×東京デスロック×第12言語演劇スタジオ「外地の三人姉妹」など。2024年夏秋にはNODA・MAP「正三角関係」への出演が控えている。
李そじん 公式X(旧 Twitter)

\ 各回当日券あり! くわしくは詳細WEBページへ /


「劇場留学〜『モモ』と時間の旅〜」
◆モモ
[開催日時]2025年3月28日(土)19:00★、29日(土)13:00/17:00、30日(日)13:00
[会場]小田原三の丸ホール 小ホール
[脚本・演出・美術]川口智子(演出家)
[振付・出演]木原浩太(ダンサー・振付家)
[出演]公募出演者 26名、李そじん(俳優)、埜本幸良(俳優)

◆稽古期間
本読み  2024年11月
プレ稽古 2024年12月〜1月
稽古 2025年2月〜3月

公演詳細ページ


✏︎ 2023年「劇場留学〜お芝居をつくる7日間〜」留学の記録はこちら! 
「劇場留学〜お芝居をつくる7日間〜」ガイド役の映画監督・北川未来さんによる映像と、演劇事業のサポートスタッフの経験もあり斎藤明仁さん(大学院生)によるテキストによる記録です!
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