【劇場留学】しらべの旅 1日目 ( 2/3 )

2023.7/17(月・祝)

 2023年夏、劇場でしかできないスペシャルな体験を楽しんでもらおうと開催する「三の丸ホールの夏休み『劇場留学〜お芝居をつくる7日間〜』」。公演に先駆け、この4月から断続的に小田原に来てワクワクを探している(らしい?!)アーティスト・川口智子さんによる旅の記録 第2弾です。

旅人 川口智子(演出家/「劇場留学」ガイド役)
せせらぎ(大道芸人/「劇場留学」ガイド役)
森田百合花(小田原三の丸ホール スタッフ)
旅した日 2023年4月3日(月)
行き先 小田原三の丸ホール、小田原城、小田原市郷土文化館、片野屋呉服店、ういろう&外郎博物館、ちん里う 本店、南十字、済生堂薬局小西本店、大学酒蔵

旅人・旅の日記:川口智子(かわぐち・ともこ)

演出家。演劇、ダンス、オペラなど、「劇場」が大好きなので劇場をつくる人。最近は、持ち運べる小さな劇場をつくって旅するのが趣味らしい。
[公式WEBサイト] https://www.tomococafe.com/

町の人々:眠らない夜の庚申講(こうしんこう)

 天守閣を降りて目指したのが小田原市郷土文化館。小さいながらも充実の展示内容で、再訪の予感。中でも今回気になったのが講についての小さな展示ケース。その中の庚申信仰、三尸の虫(さんしのむし)についての記載。

「講」についてのキャプション

「稲荷講」「山の神講」のお軸

 三尸の虫とは人間の身体の中にいると考えられている虫で、庚申の日(60日に1度)、人間が寝るとその主の身体から出てきて閻魔様にその罪悪を告げにいく。閻魔様に報告される罪悪が多ければいずれ死に至る。それを恐れて三尸の虫を身体から出さないようにするためにみんなで集まって寝ないようにする。夜通し寝ないためには面白くしていないといけないから、ご飯を食べたり、話し込んだり、果ては余興でもあったんじゃないかという気がします。
 

幻の人力鉄道を知る

  せせらぎさんが今回のしらべの旅で是非とも訪れたいと提案してくれたのが片野呉服店さんの豆相(ずそう)人車鉄道温泉夢物語館。明治29年、今から130年くらい前に、小田原と熱海をつないだ人力の鉄道「豆相人車鉄道」の資料が並んでいます。人力の鉄道、つまり、人がのった車両を人が押してレールの上を走る。それまで篭で6時間かかった道を4時間でつないだこの鉄道は、下り坂では車夫が車両をコントロールする高い技術を求められて、上り坂では乗っている乗客も(車両の等級の低い人から)降ろされて、一緒に車両を押したんだって。

展示されているジオラマ

展示物の関連キリヌキ 1

展示物の関連キリヌキ 2

 伊佐九三四郎さんの『幻の人車鉄道: 豆相人車の跡を行く』によると、実は全国に人力の鉄道はたくさん敷かれていたみたい。そして、人の方がコストをかけずに小田原―熱海間に鉄道を通せるというような考えもあったみたい。人や物が当たり前に移動している今の時代、豆相人車鉄道のジオラマを見ながら、おそらく壮絶なその道中にちょっと想いを馳せる。

ういろううりのういろう

  演劇をやっていて「外郎(ういろう)売り」を知らない人はなかなかいない。けれども、そのういろうが何なのかを知っている人もあまりいないのかも。今回のしらべの旅の前に外郎売りの話をしながら思い出したのが、香港の電気街で物を売る商人たち。ヘッドセットのマイクを付けて、すごい勢いで口上を述べる。ジャパネットたかたのリアル版が電気街の道にずらりと並んでいるのです。香港なので広東語、わたしにはわからないのですが声のトーンやスピード感でなんだか惹きつけられて足を止めたりなんてことも。

ういろう 本店

店内に陳列される関連書籍

  実際にういろう本店にある外郎さんの蔵の博物館を見せていただき、職員の方のお話をお伺い。虎を見たことのない人が描いたと思われる虎の絵。北条の印も虎でしたね、なんて話をしながら、麒麟とか獏とか絵に描かれる架空の動物のことを思う。わたしは獏が好き。人間の悪夢を食べてくれるから。

旅のお供の梅干し

  国道1号線(しつこいけれども東海道!)のお向いに渡ると梅干しのちん里うさん。以前お伺いしたときも梅の種類の多さにけっこう感激で、自分用のお土産に少しずつ味わっています。今回は小さな干し梅を買いました。東海道の旅には欠かせなかっただろうな。今でも海外に行く時にこっそり梅干し持っていったりするもの。

ちん里う 外観

ちん里う 店内に飾られている<梅干アート>


三の丸ホールの夏休み「劇場留学〜お芝居をつくる7日間〜」
[開催日]2023年8月21日(月)〜 27日(日)
[会場]小ホール、スタジオ、小田原市観光交流センター、小田原のまち

「劇場留学」公演詳細ページ

ページトップ