【劇場留学】8月27日(日) 留学7日目の記録

更新日:2023.12/4(月)

 2023年夏、劇場でしかできないスペシャルな体験を楽しんでもらおうと開催する「三の丸ホールの夏休み『劇場留学〜お芝居をつくる7日間〜』」(2023.8/21〜27)。総勢20名ほどが参加する“劇場留学”の模様を、ガイド役の北川未来さんによる映像と、演劇事業に携わる大学院生・斎藤明仁さんのテキストで、ワークショップの様子を毎日レポート。
 7日日は、午前中に最終リハーサルの後、ついにプレミア(お披露目)!

参加者 <劇場留学生>
小学3〜6年生 14名(小田原市内、南足柄市、開成町)
訪日外国人 4名(スリランカ,フィリピン,フランス,イギリス)
<中学生サポートスタッフ>
1名(小田原市内)
ガイド役 川口智子(演出家)
せせらぎ(大道芸人)
北川未来(映画監督)
横原由祐(舞台照明家)
留学日 2023年8月27日(日)
留学先 三の丸ホール 小ホール
8月27日(日)留学内容 ・ウォーミングアップ
・昨日(8/26)のおさらい、修正
・「虫の物語」動画収録
・残りのシーンの完成
・「楽屋ばなし」動画収録
・本番!
・記念撮影、お別れ
撮影 五十嵐写真館(※のみ)

留学の記録:斎藤明仁(さいとう・あきひと)

上智大学大学院博士前期課程在籍。専門は多和田葉子、フェミニズム批評、ジェンダー論。文筆家やドラマトゥルクとしても活動している。過去にかかわった演劇作品に、『夜ヒカル鶴の仮面』、くにたちオペラ『あの町は今日もお祭り』、三人之会『胎内』など。

魔法陣の完成

 最後のウォーミングアップは、今まで以上に時間をかけておこないました。増え鬼・知恵の輪・ドロケイ・目隠し鬼など、留学生たちはこの一週間で遊びのスペシャリストにもなっていました。
 昨日(8/26)上手くいかなかった部分をおさらいしつつ、新たにいくつかのシーンをつくります。まずは虫の物語の再撮影。もうすでに何度か撮っていますが、今日収録されたものは本番の際に使用します。留学生たちはとっておきの秘密の話を披露したようです。映像は、本番直前まで北川未来さんが編集をしていました。
 次は、最後のシーンからカーテンコールまでをつくります。全員でボックスシアターを横一列に並べて、その底にどこかの言葉の「ようこそ」をチョークで書きます。書かれるのは今ある言語ではなく、未来の町の言葉、わたし(たち)の、あるいはだれか(へ)の言葉かもしれません。それから、つくった看板でシアターのふたをします。いつかのだれかにこの劇場/町が継承されるように、そんな想いがこの看板(裏面は、イマジナリーな生物が描かれています)には託されていることでしょう。最後に〈月の町〉を歌ったなら、これにて本番の全てのシーンが完成です。
 しらべの旅の日記にて、川口さんは「台本はきっと魔法陣のような感じになる」と述べています。演劇とは、儀式でもありごっこ遊びでもあります。本作品は、まるで万華鏡のように、そういった演劇の様々な姿をみせてくれることでしょう。
町から劇場へ、劇場から町へ、ミクロでもマクロでもなく、二千年もの昔から五千年先の未来までを、この小田原でつないでいきます。さあ、町/待ちに待った開演です。今日の小田原は晴れのちくもりのち雨、最高のお天気に恵まれました。

「また劇場で会いましょう!」

  本番は大成功に終わりました。実はともちゃん(川口智子)がつくった台本には、それぞれの場面で起きることしか書かれておらず、科白も役柄もありません(筆者は留学の全期間が終わってから台本にはじめて目を通しました)。書かれているのは、出発から町に帰って劇場が閉まるまでに起こること。これは劇場の組み立て方の説明書なのでしょうか、あるいは旅の過程なのでしょうか。そんな不思議なテクストですが、留学生たちには配られていません。つまり、留学生たちはこの七日間の留学のなかで遊びながら、身体そのものにテクストをとりいれていったことになります。なんて素晴しいことなのでしょうか!
 記念撮影を終えて(ともちゃんとせせらぎが不思議な動きで笑わせてくれました!)、お別れの時間がやってきました。留学生たちからは「またやりたい!」との嬉しい声がたくさんあがります。制作のもりちゃん(三の丸ホール 森田百合花)は「みんなの声がたくさん集まったら、またやるかも…⁉」とこたえてくれました。思い出と名残惜しさを感じながら、いよいよお別れです。ここでめぐり逢った全員のこと、ここで起きた全てのことは、いつまでも劇場が覚えていてくれます。寂しさのあまり、何度もともちゃんのもとに戻ってくる留学生もいました。

 川口さんは「劇場とはだれか/あなたを受け入れてくれる場所」とよく語っています。また、劇場は「ミーティングポイント」であるとも言っていました。人/動物/モノが出逢い、なにかが起きている場所。大切なのは、劇場がいつも「途中」の地点であることでしょう。町へ帰ることも劇場を構成する要素のひとつなのかもしれません。本レポートも川口さんの言葉で一度閉じることにしましょう、「また劇場で会いましょう!」と。
  本レポートを書く機会を与えてくださった「劇場留学」関係者のみなさまに、この場をお借りして感謝いたします。どうかこのような素敵な取り組みが、ほかでもない小田原の公共劇場にて続いていきますことを切に願っております。

 1日毎に、参加者(劇場留学生、中学生サポートスタッフ)の方からくじで決定した2〜3名へのインタビュー映像撮影を行っていました。
 最終日の7日目は、「プレミア」(お披露目)直前に聞いた<楽屋ばなし>や、終演後のガイド役の皆さんによるアフタートークです。
そのほか、小田原三の丸ホールのYouTubeチャンネルで公開していく映像(撮影・編集:北川未来/映像作家・「劇場留学」ガイド役)も併せてどうぞ!
<本日の楽屋ばなし>
・みずき(劇場留学生)
・はな(劇場留学生)

<「劇場留学」ガイド役 アフタートーク>
・智ちゃん(演出家)、せせらぎ(大道芸人)、みく(映画作家)、ユウ(舞台照明家)

\ プレミア(お披露目) /

三の丸ホールの夏休み「劇場留学〜お芝居をつくる7日間〜」
[開催日]2023年8月21日(月)〜 27日(日)
[会場]小田原三の丸ホール 小ホール/スタジオ、小田原市観光交流センター

◆プレミア(お披露目)
[日時]8月27日(日)15:00開演
[会場]小田原三の丸ホール 小ホール
[入場]無料

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