【事業レポート】演出家・川口智子と
ミヒャエル・エンデ「モモ」を語ろう(前編)

更新日:2025.3/26(水)

 2025年3月末、ミヒャエル・エンデ「モモ」を公募出演者&プロの劇場スタッフと共に創作・上演する「劇場留学〜『モモ』と時間の旅〜」。作品をよりお楽しみいただきたく、原作の「モモ」や著者のミヒャエル・エンデの魅力も併せてお伝えしようと、小田原市内の書籍関係施設で、関連展示やイベントを開催してきました。今回は、1月に行った南町にある本屋・南十字でのトークイベントの模様を、凝縮してでご紹介。前編は川口さんの演劇トークを中心にしています。
 ✏︎後編はこちら▶︎【事業レポート】演出家・川口智子とミヒャエル・エンデ「モモ」を語ろう(後編)

イベント開催日 2025年1月26日(日)14:00〜16:00
会場 南十字(小田原市南町2-1-58)
出演 川口智子(演出家/「劇場留学〜『モモ』と時間の旅〜」脚本・演出・美術)
聞き手:鈴木美咲(南十字 運営メンバー/編集者・デザイナー)

◆まず、川口さんの演劇とのかかわりについて、お聞きしたいのですが?

 幼稚園でキリスト降誕劇をやってから、演劇や劇場が大好きで、学生時代には演じる側を経験することもありました。その後もずっとお芝居をつくる道に進みたいと考えていた時に、1年間休学して、イギリスに留学しました。イギリスでは、ひたすら旅をしたり、お芝居を観たりして、刺激的な時間を過ごしていたんです。一度、ファッションショーの手伝いをしたら、裏方のお仕事や、どうみせるかという演出の視点がすごく楽しくて、これってもしかしたら“演出”だったのかも!? と気づき、日本に帰国してから、大学の先生でもあった佐藤 信さん(劇作家・演出家)に、「演出を勉強したいです」と言って、そこから演出家の道に入りました。
 世の中の演出家には、脚本家や俳優として活躍する方も多いですが、私は基本的には演出メインでやっています。ただ、最近始めたユニット(ほころびオーケストラ)では出演する側になったり、今回の「モモ」では上演台本を作ったりと、少しずつ変わってきているかなと思います。

◆ミヒャエル・エンデや「モモ」は以前から読まれていたんですか?

 今日も置いていただいていますが、「エンデの『遺言』」という本が流行っていた時に読んで影響を受け、エンデの考え方を演劇にできたらいいなと思っていました。ライフワークにしている<大人の読み聞かせ>というシリーズで、「エンデの『遺言』」を取り上げることをしたのですが、エンデのいろいろな作品に触れ、エンデの“物語る”力に惹かれました。
 具体的には、「はてしない物語」のような、ファンタジーにどっぷりつかっていく作品もあるし、思考の迷宮に入っていく「鏡のなかの鏡」のような作品もあるし、色々な角度から世界を見る作品がありますが、いずれにしてもフィクションやファンタジーを使って真実を伝える表現がとても巧みだな、と感じます。
 「モモ」は以前から演劇にしたいと思っていた作品で、特に“灰色の男たちが踊り狂う”絵が浮かんでいて、「『モモ』をやらないと死ねない」くらいの気持ちでいたんです。作品の冒頭に劇場がでてきますが、それだけで“ありがとう!”と思うのですが、その後ずっと劇場の話なので演劇にするのは自然な流れですよね。
 実は最近、エンデの友人が書いた伝記を読んだのですが、彼の作品に惹かれるのは、エンデの根本に“演劇”があるからなんだと腑に落ちたんです! エンデは俳優として活動していた時期もあり、ドイツを代表する演劇人、ベルトルト・ブレヒトの稽古に出たエピソードなどもあって……エンデ作品を通じて、身体感覚のある読書体験ができるのは、彼が演劇で手に入れた表現であるように思います。

◆小田原で「モモ」を制作・上演することについて、お聞きしたいのですが?

 2023年夏に小田原三の丸ホールで初めて行った「劇場留学〜お芝居をつくる7日間〜」は、どういうところに街の物語が始まるきっかけがあるのか、それをワークショップの軸にしたくて、小田原のまちをリサーチしてつくった作品です。リサーチで出会った“小田原にある物語の始まり”の構造を抜き出し、ほぼ即興的に演じてもらったんですね。とても抽象性の作品だったので、観る方によってすごく変わる作品だったと思うのですが、この制作を経て、小田原の街と物語がより絡める作品を上演したいと思いました。
 そうすると、ずっと頭の中にあった「モモ」がぴったりなんじゃないかということで、三の丸ホールのスタッフにも相談して決まりました。
 「モモ」は街の物語ですし、その“物語る”力が、街の人と創作していくことで、より充実した形で届けられるだろうと感じていて、今回、すごく良い機会になったと感じています。小田原に住んでいたり、縁のある方と一緒につくってので、どうぞ楽しみにしていただけたらと思います。

\ 本の世界と合わせてお楽しみください /

本にまつわる関連展示

◆〜2025.3/31(月) 小田原駅東口図書館
モモとミヒャエル・エンデ
「劇場留学〜『モモ』と時間の旅〜」プロの演出家・出演者のおススメ本を特別展示

◆〜2025.4/13(日)南十字
モモとミヒャエル・エンデ 関連展示【後期】
 

\ WEB・窓口予約受付中 /


「劇場留学〜『モモ』と時間の旅〜」
◆モモ
[開催日時]2025年3月28日(土)19:00★、29日(土)13:00/17:00、30日(日)13:00
[会場]小田原三の丸ホール 小ホール
[脚本・演出・美術]川口智子(演出家)
[振付・出演]木原浩太(ダンサー・振付家)
[出演]公募出演者 26名、李そじん(俳優)、埜本幸良(俳優)

◆稽古期間
本読み  2024年11月
プレ稽古 2024年12月〜1月
稽古 2025年2月〜3月

公演詳細ページ


✏︎ 2023年「劇場留学〜お芝居をつくる7日間〜」留学の記録はこちら! 
「劇場留学〜お芝居をつくる7日間〜」ガイド役の映画監督・北川未来さんによる映像と、演劇事業のサポートスタッフの経験もあり斎藤明仁さん(大学院生)によるテキストによる記録です!
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