【施設のはなし】三の丸ホールのピアノと調律師さんのお話

2023.11/1(水)

 日本や世界に数多存在する楽器の中でも、かなりメジャーな存在であるピアノ。約8千〜1万とも言われる部品からなるこの楽器の質を維持しているのが、調律師の皆さんです。今回は、どんなお仕事をされているのかを、少しご紹介します。

レポート 飯田能理子(小田原三の丸ホール スタッフ)

小田原三の丸ホールのピアノ

2021.9.26「中根希子 ピアノ開きコンサート」(撮影:稲子紀夫)

 コンサート会場や、練習場所としても使用される小田原三の丸ホールには、メーカーや種類の異なる5台のグランドピアノがあります。
 大ホール、小ホールにある3大のフルコンサートグランドピアノ(2台のスタインウェイ&サンズ社製 D-274と、1台のヤマハ社製 CFⅢ)はと言われる最も大きな種類の楽器です。ダイナミックな音色や、表現力の豊かさを兼ね備えた、本格的な演奏会にぴったりの楽器です。
 スタジオには、小田原市立中央図書館(かもめ図書館)から移管されたカワイ社製 RX-1は、作曲家・石井歡さん遺贈のコンパクトグランドピアノがあり、本番からリハーサルまで、幅広い用途で活用されています。
 練習室には、スタインウェイと同じく、“世界3大ピアノメーカー”の一つであるベーゼンドルファー社製の、アップライトピアノ(寄贈品)が完備されています。同メーカーでは珍しいアップライトピアノということもあり、ピアノの愛好家の方にもかなり注目されている楽器です。
 鍵盤楽器という意味では、電子ピアノの貸し出しもしておりますが、今回は調律師さんのご紹介に合わせて、アコースティックなピアノのご紹介のみにさせていただきます。

調律師さんの仕事〜調律

 そんなピアノを、良い状態で演奏していただくために、コンサート等に合わせて登場される方々が、g調律師の皆さんです。前述した通り、精密な機構がうまく機能して初めて、ピアノ本来の音色が楽しめるようになるため、それらを細かくチェックしてくださる、調律師の方々のお力なくして、ピアニストの素晴らしい演奏なし、といっても過言ではありません。
 多岐にわたる調律師さんのお仕事の中でも、主要な工程の一つが、そのお名前にも入っている“調律”の作業です。
 西洋クラシック音楽から発展したピアノは、全て平均律(1オクターブの音程を均等な周波数で分割した音律)という、音律で調整されます。ピアノは88鍵からなる鍵盤打楽器で、側板の中に張られている230本の弦(各音に対し、1〜3本の弦を同時に鳴ら)を打弦して、音を鳴らす仕組みになっています。
 調律では、弦の張り方により音色の高さを整えることはもちろん、演奏家が音を出す際に重要になる、鍵盤のタッチや重さ、ペダルの具合を調整し、演奏家の皆さんが最大限の表現ができる状態にすることを目指しているそうです。
 小田原三の丸ホールでは、ピアノの質を保つため、当館の楽器を調律いただく方を登録制としています。今回は登録調律師さんの中でも、開館時に中根希子(あきこ)さんが選定したスタインウェイピアノの納入時からお世話になっている、調律師の眞鍋 要さんに、調律の際に気をつけていることなどをお聞きしました。
 基本は、その日の演奏家の方から希望をうかがうほか、演奏楽曲からどのようなピアノの状態にすると良いのかをイメージして楽器を調整していくそう。
 また、ピアノを構成する主な材料は木であるため、気温や湿度に大きく左右されます。大ホールや小ホールではピアノ庫を設けており、スタジオ・練習室では細かく温度・湿度を管理して楽器を守っていますが、当日の温度・湿度によりピアノの調子はかなり異なるのだそう。調律師の皆さんは、気象状況による変化も感じながら、楽器を調整していくとのこと。大変繊細な作業であることが、わかります。

調律師さんの仕事〜定期メンテナンス

ヤマハ CFⅢ 定期調律の際の一コマ

 年に1回行う保守点検では、調律の時間のみでは難しい、細かい楽器の点検をお願いしています。
 ピアノの内部を解体し、可能なかぎり細部にわたる清掃や調整を行ったり、部品毎の噛み合わせなどの調整や動作確認をしたり、外装に傷がないか、短い距離の移動のためについているキャスターは問題なく動くかをチェックしたり……約1〜2日かけてじっくり作業。楽器の内側から外側の隅から隅まで、不備がないかを確認し、少しでも違和感を感じる部分があれば、部品の交換や微調整を行って、楽器を良い状態に保っています。
 調律師の皆さんのお力あってこそ、皆さまに安心して演奏していただいている“ピアノ”。今週末、2023.11/3(金・祝)文化の日、小田原三の丸ホールでは、そんなピアノにまつわるイベントが2つあります。弾いて、聴いて、観て、ピアノの魅力に触れてみてください。

スタジオにて「オープン・ピアノ」を開催!

 来る11/3(金・祝)の文化の日、小田原の文化を広く伝える活動をしている小田原文化レポーターの皆さんが、「三の丸文化の日」と称して、今回ご紹介したピアノを、どなたでも弾句ことができる“オープン・ピアノ”を開催!
 スタジオ(建物2階)にあるピアノを弾いてみませんか? “オープン・ピアノ”の開始前には、山田浩子さん(ソプラノ)、田中玲子さん(ピアノ)によるオープニング・ミニコンサートもあります♪ このピアノを遺贈された作曲家・石井歡さんにまつわる楽曲や金子みすゞさん作詞の作品を、お話を交えながらご紹介します。いずれも入場無料です。

小田原文化レポーターpresents「三の丸文化の日」
[オープニング・ミニコンサート]11:30〜12:00
[オープン・ピアノ]12:00〜17:00

ピアノだけではなく、チェロ×テノールとの豪華共演が聴きどころ・見どころ!

三の丸クラシックス2023秋 中根希子 with 溝口 肇&ジョン・健・ヌッツォ
[開催日]2023年11月3日(金・祝)18:00開演(17:00 開場)
[会場]大ホール

<関連企画>小田原文化レポーターpresents 三の丸文化の日
〜11/3は1日三の丸ホールで!〜
本公演チケットをお持ちの方限定の「夜カフェ」や、スタジオでグランドピアノ(作曲家・石井歡さん遺贈)がどなたでも弾くことができる“オープン・ピアノ”等、盛りだくさん♪

公演詳細ページ

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